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2016.04.28 ツカエル組織論

生きているビジョン

2005年、メインバンクのみずほコーポレート銀行(現みずほフィナンシャルグループ)から西武鉄道(現西武HD)の経営再建を託され、同行副頭取から西武鉄道のトップに転じた後藤社長。有価証券報告書虚偽記載問題から上場廃止となり、東日本大震災の苦難を乗り越えて再上場を果たした西武ホールディングス。オリンピックイヤーに向けこの夏には旧赤坂プリンスホテル跡地を再開発した東京ガーデンテラス紀尾井町のお披露目も控えています。西武王国とまでいわれた日本を代表する巨大組織を約10年にわたって再生してきた後藤氏。昨今、日本の老舗大企業が揺れる中、息を吹き返した新西武王国から得られる復活の一手とは何でしょうか。

再建にあたって後藤氏が最も重視したもの。それは「新西武グループ」の方向性を示した「ビジョン」でした。本格的な経営再建へ舵をきった06年3月、経営理念と社員の行動指針を明確にした「グループビジョン」を発表。

「でかける人を、ほほえむ人へ。」をスローガンに掲げます。

同時に社員へのアンケート調査で現場の問題点を洗い出し、縦割りで断絶していたグループ間の交流を積極的に行うことでスローガンの浸透とグループの一体感醸成に全力を注いだといいます。

「ビジョンの大切さ」はよく聞きますが、ビジョンを掲げただけで企業業績は上がるものなのでしょうか?

後藤氏は「経営で最も大事なのはビジョンを浸透させることだ、しかしその浸透こそが難しい」と語っています。後藤氏は銀行でも経営理念策定に携わったことがあり、ビジョンをつくるだけでなくそこから求心力を生み出すことの難しさを痛感したといいます。

「私は銀行でも『ビジョン』をつくりましたが、率直にいってあまり求心力がなかった。ビジョンはあくまでもビジョンであり、仕事と深い関わり合いがあると実感できなかった。西武に来てはじめて『ビジョン』は会社の背骨であり、羅針盤であると痛感しました。」

では「ビジョン」をただ額縁に入れて飾るだけでなく、機能させるにはどうすれば良いのでしょうか?

「常にビジョンに立ち帰り咀嚼することだと思います。ビジョンブックは私も常に携行して、判断に迷ったときには必ず読み返しています。グループ社員にも携行してくれと伝えて朝礼のときに唱和してもらっています。グループ内の各種制度もビジョンに紐付けて『ほほえみ大賞』という表彰制度やビジョンを実現する施策を社員に提案してもらう『ほほえみFactory』、代表と若手社員で座談会を行う『グループビジョン推進月間』などを実施しました。そうして常にビジョンを感じ・考えてもらうことがとても大事で、これをやらないとビジョンは形骸化してしまう。でもこの活動を会社が本気でやると社員は変わってきます。いまでは経営でいちばん大事なのはビジョンの浸透だと思っています。」

新西武王国ではこうして「ビジョン」に息を吹き込みました。トップ自身が組織の心臓として、その重要さを理解しエッセンスを送り出し止まることなく発信し続けることで、脈に血を通わせ体内組織を巻き込みながら組織を循環させていく。

4月もあっという間に過ぎ去り、そろそろ新入社員が現場デビューするという会社も多いのではないでしょうか。トップや人事部がしっかりと伝えてきたはずの「ビジョン」は現場に息づき、先輩社員は体現できていますか?自社のビジョンが生きているか、再確認するいい時期かもしれません。

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