単純接触効果の活用
リオ五輪も終わり次回の夏のオリンピックに向けて街中では一時物議を醸した東京五輪のエンブレムをよく見かけるようになりました。公共交通機関や商業施設など様々な場所で目にする組市松紋のエンブレム。東京五輪へ向けて、社会全体の期待が高まっているように感じられます。オリンピックのエンブレムは期間限定のシンボルですが、組織でいえばそれは企業ロゴや企業のキャラクターとなります。統合や再編、変革の背景からロゴやキャラクターを刷新するケースがありますが、近年話題になった例でいえばサイバーエージェントやInstagramのアプリロゴなどが記憶に新しいところでしょうか。そして新しいシンボルが見慣れてくると不思議と初期の違和感や否定的な声は小さくなりいつの間にか肯定的に受け入れられていく、と感じられたことはないでしょうか。
サイバーエージェント社では去年、コーポレートロゴと「Ameba」のブランドロゴを一新。同社はこれまでの既存事業に加えて動画・音楽といったエンタメ事業に注力すべくクリエイティブ強化の意味を込めてロゴを刷新したそうで、代表の藤田氏によれば「クリエイティブで勝負する覚悟を示した」といいます。これまでの会社のロゴのイメージも強いため構築したものを捨てる潔さを経営者として見せ、社内に対して「過去にすがらせない」というメッセージを示したかったとのこと。AbemaTVのAbemaくんや変幻自在に形を変えていきそうな「CA」のロゴはネットやアプリ上でよく目にするため、すぐに頭に浮かぶという方も多いのではないでしょうか。
Instagram社も今年アプリロゴを刷新。その理由について「ユーザーの投稿内容や利用方法の多様化に刺激を受け自社も見た目を一新する必要があると感じた」としています。レインボーカラーとカメラレンズという従来のロゴの要素を尊重しつつコンテンツや利用方法の多様化を反映したデザインに、刷新当初は見慣れた従来のロゴの方が良かったという声も多かったそうですが「レイアウト」「ブーメラン」などの関連ロゴも同様に同時期に刷新することで既に見慣れたというユーザーも増えているのではないでしょうか。
人は特定の対象や考えに何度も接するうちにその対象にますます好意的な感情を持つようになる(ただし当初からその対象に好意的または中立的な感情を持っていることが条件)といいます。これは心理学者のロバート・ザイアンスが提唱した「単純接触効果」と呼ばれる原理ですが、オリンピックのエンブレムやコーポレートロゴの浸透はそのブランディングツールとしての役割を果たすべく「単純接触効果」が上手く使われている例といえそうです。また他の例として「おふくろの味」や「ファッションの流行」「選挙戦」もこの原理の代表例として挙げられます。それは必ずしも視覚的な接触だけではありません。
組織づくりでいえば、わかりやすい例として先のブランディング戦略におけるロゴとなるわけですが、視覚的な接触以外でも例えば以下のようにテーマに合わせてさまざまな形で接触効果は発揮できそうです。
「行動指針の伝播」(視覚的な行動指針ポスターの貼り出しだけでなく朝礼の小話で行動指針を絡める、行動指針に則った成果を表彰するなど)
「小目標・ゴールの反芻」(日々の小さなつまづきや成果に対して個人の目標やゴールと絡めてコミュニケーションをとる、チーム間や部署間を跨いで目標を共有するなど)
「社内ネットワークの強化」(ハイパフォーマーとメンバーの接点創出、他部署の部長やリーダーとの接触機会、同期同士の企画や仕事など)
皆さんの会社では接触効果を上手く活用できていますか?