ホームコラム不正と組織と個人
2016.11.24 ツカエル組織論

不正と組織と個人

フォルクスワーゲン(以下VW)での排ガス不正や三菱自動車の燃費不正問題、東芝の不正会計問題など近年世間を騒がせた大手老舗企業の不正問題。
残念ながらいつの時代にもこのような不正問題は起こりうるといえます。

なぜこのような不正は生まれるのでしょうか。未然に防ぐことができるとすれば、私たちはどうすれば良いのでしょうか。

そもそも不正の構造とは何なのか、先に挙げた名門企業の不正問題では多くのメディアでその要因について議論・分析がなされ、これらの不正に共通する背景として「過大な経営目標」「成果への重圧」「権力闘争」「秘密主義の蔓延」などが挙げられています。

例えば東芝では「チャレンジ」という言葉がプラスの空気ではなく圧力となり各部門の水増しを誘引したといいます。またVWでは上層部(一部のファミリーが議決権の51%を掌握)が部下を厳しく統制し権力を持った一部の管理職が全決定権を掌握していたといいます。

不正を不正とも思わず平然とそれがまかり通ってしまう組織構造ができるまでには、当時の各々の企業が生きた環境の中で様々な要素が複雑に絡みあっていたことは確かです。ただその中で類似点を見れば、今後に活かせる予防策の糸口が見つけ出せそうです。

企業組織とは異なるものの同じ組織体として軍事組織に焦点をあて、日本軍の大東亜戦争時の数々の敗北から日本軍という組織の失敗要因について考察した名著「失敗の本質」では、そうした失敗した組織特性をこうまとめています。

・ 組織メンバー間の“間柄”によって意思決定がなされる組織
・ 人間関係重視の属人的組織
・ 経験や情報、事実から学習しない組織
・ 個人責任が不明確なまま結果でなくプロセス重視で評価される組織

これらは企業組織でいえば以下のようなことに表れるのかもしれません。

・ “〜さんのことなら“と人間関係や根回しありきで判断決定がなされる
・ 出自や部門間での派閥や癒着がある、勤続年数や上下関係を重視する
・ 過去の成功に執着し方法転換しない、希望的観測による失敗の繰返し
・ 鉛筆なめの曖昧な評価、成果が伴わずとも努力や人柄のみでの評価

また同著では上記のような組織特性を持つに至った理由についてこう考察しています。

・ 組織内の融和と調和の維持に注力し組織の自己革新能力を持てなかった為
・ 過去の成功への過剰適応によってもはや無用有害となった知識の棄却ができなかった為

組織にとってこれまで蓄積した文化を変革することはとても困難であり、当時の日本軍は大東亜戦争以前の戦争での勝利によってその戦略や戦力に過信・過剰適応してしまったといいます。

よってその後の環境や敵国の変化に対応できなった旧日本軍という組織。「適応は適応能力を締め出す」という同著の言葉を借りれば、企業の不正問題についても同じことが言えるのかもしれません。

そんな組織にはならない為に同著では「自己変革組織」を目指すべきとし、そうあるためのポイントとして以下を挙げています。

・ 不均衡の創造:完全な適応状態は組織の死であり、あえて組織内に緊張や歪みが発生するような不均衡をつくり出すべき
・ 創造的破壊:異質な情報やヒトを循環させて既存知識の棄却を促進すべき
・ 自律性の確保:集権的にならぬようメンバーの自律を確保し同時に成果で評価するべき

まさにベンチャーや成長企業のように、主体的に未来を描きフロンティアに挑戦し新たな時代を切り開いていくような組織であれ、とここでは述べられているわけですが、そういった組織にしていくのは当然のことながらその組織を構成するメンバー一人ひとりであり、上記のポイントは個人にも当てはまるといえるでしょう。

皆さんの会社では自己変革組織としてのポイントをおさえられていますか、また個人として今の環境に適応しすぎて異質なものを受け入れ難くはなっていませんか。自身の経験や知識を刷新できていますか。

お役立ち資料

研修や育成に関するノウハウをまとめた
お役立ち資料を公開しております。

お役立ち資料ページへ

お問い合わせ

JAMのサービスについての
お問い合わせはこちらから。

お問い合わせページへ