2017.09.03 セミナーレポート

【アレすご vol.7】人事担当者がぶち当たった3つの壁とその乗り越え方(freee株式会社古塚氏)

株式会社JAM主催のトークLIVE「アレすご」

第7回は、freee株式会社で人事業務に携わっている古塚さんをゲストに招いて『古塚さんが人事業務でぶち当たった3つの壁とその乗り越え方』をテーマにトークセッションを実施。

freeeにはユニークな人事制度が非常に多くありますが、その施策はどのように生まれ、どう運用して定着させたのでしょうか。その導入背景や運用方法、苦労した部分など、古塚さんのノウハウをまとめました。

古塚 大輔|freee株式会社 メンバーサクセスチーム ジャーマネ

早稲田大学法学部卒業。東洋ビジネスエンジニアリング株式会社で人事労務・新卒採用・人材育成業務を経験後、デロイトトーマツコンサルティング株式会社にジョイン。基幹人事制度構築、人事業務改善、人事システム導入、企業統合のPMOなどに従事。2015年7月に初の人事専任メンバーとしてfreee株式会社に入社。2015年10月よりメンバーサクセスチームのジャーマネとして、新しい人事・総務の姿の実現にチャレンジ中。
※freeeのマネージャーは特にメンバーの成長を支援することをミッションとして担っている役割でしかなく、メンバーと対等であることを明確にするため、「ジャーマネ」と呼んでいます。

水谷 健彦|株式会社JAM 代表取締役社長

(株)リクルートエイブリック(現リクルートキャリア)などを経て、2001年創業間もないリンクアンドモチベーションに入社。事業責任者、取締役を歴任。リアリティと再現性を兼ね備えたコンサルティングの提供を目指し、株式会社JAM設立。急成長企業の組織課題解決に向け、クライアントの組織戦略策定および実行に携わっている。

はじめてのレビュー制度導入の壁

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▼freeeの人事評価制度『インパクトレビュー』とは?

水谷:まずは1つ目の壁。「レビュー制度導入の壁」についてお聞きしたいです。

古塚:まず弊社のレビュー制度は『インパクトレビュー』と呼んでいます。特徴としては、弊社のレビューでは定性的な情報を中心に「インパクトを創出する力の成長」というものを語るところです。「あなたの達成したことはこれですね」「それの達成に向けたプロセスとしてはここがよかったですね」「ここがもう少し改善できましたね」と、すべて言語で伝えるようなアプローチのレビュー制度です。

これを取り入れたきっかけは、『ムーブメント型の組織』を目指すためです。ムーブメント型の組織とは、ミッション・ビジョンの実現というゴールは全員共通なのですが、そこに対してみんなが自然発生的に集まってきて、それぞれができることを最大限やりきって達成する。ミッション・ビジョンの実現のために、メンバーが自発的にやりたいと感じて、自由に動けるような組織のことです。

そのためには「信頼」「共感」「成長」の3つの要素が重要になると考えており、その中の「成長」にフォーカスしたレビュー制度を取り入れようとなりました。

水谷:インパクトレビューはどのようにやるのですか?

古塚:インパクトレビューの設計思想として、弊社の価値基準にもとづいた、3つの重視しているポイントがあります。

  1. 全員が『マジ価値』を主体的に考えられること
  2. 「あえて共有」に基づく、率直かつ良質なレビューを担保すること
  3. 理想ドリブンで成長を実現する(業績目標の達成度ではなく、成長度合いを見る)

まずは前提となる考え方として、『マジ価値』のもと、全員が平等であるべきだと考えています。『マジ価値』とは、「ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えることをする」ということです。

そういった考え方において、いわゆる従来型の人事制度にある役職や能力レベルは雑音でしかない。我々は一般的な「等級」というものではなく、純粋に成長の道標として『インパクトマイルストーン(略して「IM」)』を設定し、本人とジャーマネしか知らない情報にしています。

IM=期待するインパクトの大きさ』となり、IM1からIM8までの8段階に分けています。個人の成長目標としての道標であり、他人と比較するものではなく、自身の成長度合いの絶対的指標です。「今はIM2ですね。このくらいのインパクトを期待しています」というコミュニケーションをとっていきます。自身の中での伸びしろを見ていく基準であり、基本的には役職とは関係ありません。

また、成長を支援していくためにフィードバックは不可欠ですが、率直かつ良質なものにしなければなりません。そこを念頭においてフィードバックの質をあげるために、特に複数回の『キャリブレーション』と呼ぶ、フィードバックをチェックする機会を設けるなどの努力をしています。

業績目標に関しては、「完全に見ていない」というわけではなく「そこまで明確に見ていません」というニュアンスに近いです。よくあるのは「業績目標に対して達成度何%でしたね」というフィードバックですが、弊社ではそのような会話はしません。「IMに対して今回の業績はどうだったか?」を見て、より自身の成長にフォーカスした会話ができるようにしています。

水谷:実際にどのようなインパクトを残せばIMはあがるのでしょうか?

古塚:組織へのインパクトは数字で置き換えるのがすごく難しいんです。結構いろんな視点で見てやっています。イベントにおける幹事としての活動も見ていますし、組織を束ねるリーダーシップだけでなく、エンジニアのメンバーに多い背中で見せるリーダーシップも見ています。

そういった視点があって、多くの人のフィードバックをもとに「このメンバーをIM4に引き上げるためにはここが足りないんだな」ということは見えてきます。後ほどご紹介しますが、キャリブレーションなどで得られる他のジャーマネの意見をもとにより客観的なフィードバックをメンバーに渡すことはできていると考えています。

水谷:ムーブメント型の組織だから、「決められたことをやれるようになったら評価される」ではなく、「目的に対してどう貢献するか、その貢献度の大きさ」を周囲の声をもとに見ているのですね。

▼フィードバックの質を高めるための『キャリブレーション』

水谷:フィードバックの方法について具体的にどうやっているんですか?

古塚:フィードバックの質を高めるために、先程お話した『キャリブレーション』をうまく活用しています。キャリブレーションを和訳すると「査定会議」と出てくるのですが、弊社では成長査定のようなイメージで、「この人の課題は何だろう?」ということを議論していく会議を3段階に分けて実施しています。

まずはチームメンバーの直接のレポートラインに該当する「ジャーマネ」とその上の「シニアジャーマネ」の間で『チームキャリブレーション』をおこないます。ジャーマネがそのメンバーのレビューを書いて、「この人にはこういうフィードバックをしようと思います」と、シニアのジャーマネにプレゼンし、フィードバック内容をブラッシュアップします。

それから、ビジネスサイド、プロダクトサイドのシニアジャーマネが集まって『ファンクションキャリブレーション』を実施します。そこでも「この人の成長は、このようにフィードバックしようと思います」とキャリブレーションの場で伝え、さらにレビューをブラッシュアップしていくんです。

「こちらのチームから見ていると、この人はもっとこういういいとこあったよね」「実際にこの人が次のIMになるためにはどういう要素が必要だろう」というIMを進める(IMは成長の道標のため、「上げる」ものではなく、「進める」と表現)具体的な議論もしていきます。

最後は『メンバーサクセスコミッティーキャリブレーション』というのですが、CEOとCOOとプロダクト、ビジネスサイドの責任者の4名と事務局として私が入ります。ここまで来るとすべてのメンバーは見きれないため、いわゆるジャーマネ層や著しく成長を遂げているメンバー、またはその逆のメンバーを中心に見ていきます。

その人の課題や今後の成長にために必要なことを検討することで、フィードバックの質を段階的に上げていっています。

▼正式入社2日目で辞めたいと思うほどの反発があった

水谷:ちなみにどのあたりが壁となったんですか?

古塚:実は正式入社が7月1日だったのですが、それ以前からCEO、COOと人事制度を設計するために打ち合わせをしていたんです。

ただ、正直言って私が今まで関わってきた会社の規模とは違いますし、組織カルチャーも本当に独特なので、まずはそういったことを理解するのが大変でした。それをなんとか言語化して資料に落としていきました。

入社して数日後に全社ミーティングがあり、そこでいきなり人事制度をお披露目することになりました。いきなり入社した瞬間に人事制度の発表をやったんですね。

そうしたところ、確かにインパクトレビューという制度自体がユニークで理解するのが難しい側面もあったと思いますが、「評価」という言葉自体に反応して反発する人もいれば、評価制度を導入するような普通の会社になってしまったのかといった落胆の声などがその場で予想以上にあがってきたんです。

もうこれで辞めようかなと思いましたね(笑)。

水谷:辞めないで頑張れたのは何かあったんですか。

古塚:捨てる神あれば拾う神ありというか、味方の人もいたんです。それが今の私の直属の上司でした。

リクルート、Googleと大きな組織で所属してきた経歴のある方で、「君のやってることは間違いじゃないよ」「ぼくらももっとフォローすべきだった」というような話をしてくれる人がいたのはすごく大きかったです。

水谷:そこからどのように進めていったのでしょうか?

古塚:そこから最初にやったことは、「今日発表したことはドキュメントに落としますので、それに対して質問でも非難でも何でもいいのでコメントを書いてください」と伝えたんです。

そうすることで、ある意味冷静に会話ができ、改善への分析ができるのではないかと思い、実際にやってみたら結構うまくワークしたんです。

お披露目する前にドキュメントにして、メンバーに渡して共有してコメントしてもらうのは良い方法だと大きな発見でした。今では大きな制度を入れるときには、このようなアプローチをするように心がけています。

水谷:文字にすることで感情的な部分が少しはマイルドになりますよね。

古塚:マイルドになりますね。そこで何も言わない人はある意味「もう同意ということでOK」とみなしています。「説明責任がこちらにあるのであれば、メンバー側には質問責任がありますよね」という感じです。


人事制度の整合性確保の壁

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水谷:二つ目の「人事制度の整合性確保の壁」について教えてください。

古塚:私は、freeeではじめての人事担当者だったのですが、当時は人事制度がそこまで整っていなかったので、経営陣から「あれもこれもやりたい」と要望がありました。たとえば組織文化の維持、女性支援、育児支援、報奨制度などなど・・・。レベル感が異なる、大なり小なり多くのことに取り組んでいくことが求められました。

ただし、当時は人事が私一人しかおらず、加えて給与計算も私がやっていました。そのため、正直手がまわりませんでした。それでもやるべきことはどんどん出てくるため、会社のために何から手をつけるべきなのか、仕事に対する取り組み方で壁にぶち当たりました。

そこでまずは優先順位をつけて何から取り組むべきなのかを考え、また、それを経営陣に納得してもらうためにうまく説明する方法が必要だと思い、『メンバーサクセスポリシー』をつくったんです。

メンバーサクセスポリシーがあることで、何か施策を実行する際にどのような指針や考え方で優先順位をつけるべきなのか、お互いが共通認識を持てるようになります。やること、やらないことに対しての説得力が高まります。

先程のムーブメント型の組織をつくるというところをスタート地点とし、そこから落としていくと、freeeのミッションに共感してもらうことが1つ目のポリシーになり、2つ目のポリシーが成長、そして3つ目のポリシーが信頼関係になります。「会社の考え方をしっかりと浸透させていこう」「成長を実現させてワクワクしてもらおう」「横のつながりをつくり信頼関係を深めていこう」というような内容です。

この3つの視点からやりたいことを棚卸ししていきます。「施策を導入したときのインパクトが一番大きいものはなんですか?」といったようにディスカッションをしながら交通整理をしていき、なんとか仕事をやりくりした感じですね。

水谷:メンバーサクセスポリシーによって優先順位の議論がしやすくなり、「あれもこれもやりたい」という経営者の意思決定に貢献していくと。

古塚:何でも実施すればそれはプラスになるのですが、従業員の納得感が弱く、またあとから「なぜその施策を取り組んでいるのか」説明がつかなくなることが出てきてしまうのではないかと思います。

メンバーサクセスポリシーは経営陣に対してだけでなく、実施する施策に対してのメンバーの理解にもつながる可能性があると考えています。「こういうものをもとにやっているんですね。それなら異論ないです」と。インパクトレビュー制度のときのような「いきなり発表することによる反発」もやわらげることができます。

さらに、メンバーサクセスポリシーをつくっておもしろかったのは、弊社のセールスがこのメンバーサクセスという言葉にすごく共感をしてくれて、弊社の人事労務プロダクトのセールストークにあえて組み込んでくれているんです。そういうのは人事としてもすごく嬉しくて、今まで経験してこなかった手応えを感じています。


スタートアップひとりぼっち人事の壁

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水谷:最後は、「スタートアップひとりぼっち人事の壁」です。

古塚:なんでもかんでも自分一人でやらないといけないため、どのように通常業務をさばいて工数を確保し、人事制度を企画していくべきかという壁がありました。先程申し上げたように、私が入社したときは人事労務も兼任しており、それなりに工数がかかっていました。

入社当時から弊社の人事労務プロダクトは使っていましたが、それが合っているかどうかを確かめるための検算用のスプレッドシートや、休暇管理や従業員情報の変更内容のリスト用のスプレッドシートなんてものもありました。今では1日2日で給与計算は終わるのですが、当時は5営業日くらいかかっていました。

さらに、会社の急成長のフェーズでもあったため、どんどん人員が拡大していきました。そのときの雇用契約書の締結や入社受け入れも実は私がやってたんです。毎週のように入社してくるため、その対応に工数をとられて、人事制度を企画するための時間が確保できないんです。

水谷:それは大変ですね・・・!これをどう解決したんですか?

古塚やり方を抜本的に変える必要があると感じました。スキマ時間でちゃちゃっと定型的な業務ができるような方法はないかと、そのようなことを模索していきました。

たとえば、入社受け入れ時の書類対応。通常ならば紙ベースの書類のやりとりなどになりますが、事前に入社者の方にGoogleスプレッドシートを共有して必要情報を入力してもらい、入社前に記入とこちらでの確認をするフローにしました。

そうすれば入社タイミングで確認作業などが集中せずに分散できますし、ちょうど社労士さんへの手続き依頼もデータでできるようにしたところでしたので、そのまま社労士さんに転送して、入社のタイミングで保険証を出せるようにするなどのクラウドを活用することで業務を変え、作業量の分散、省力化をおこなっていきました。

使い方をちょっと機転を利かせて変えることで、だいぶ楽になった感触があります。ただそれでも、ある程度労務管理に時間をとられてしまっていましたし、人数の拡大は続きそうでしたので、同時に人事担当者1名の採用も進めていきました。

水谷:工夫次第で生産性が変わるということですね。

古塚:そうですね。やり方を変えることに対し、億劫になるところもあるのですが、弊社の価値基準に「アウトプット→思考」というものがあり、まずはアウトプットしてから振り返ろうという文化になります。それをやってみたら意外とうまくはまった感じです。

クラウドツールにしても、今はさまざまなHRTechが出ていますが、まずは試しにやってみたらいいと思います。まずは触ってみて、その中で使えそうなものをスモールスタートで活用してみるなど、そのようなスタンスが重要だと思います。

水谷:ありがとうございます。人事もトライ&エラーのスタンスが重要ということですね。

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