「限界を引き受け、個性に変える」バレエダンサー 吉田都さん
日本人の体型では欧米人に敵わないと思ってしまうことの多いバレエの世界。
そんな世界で約20年もの間世界の名門、ロンドンのロイヤルバレエ団のプリンシパルを務めた日本人バレエダンサーがいることをご存知ですか?
それが吉田都さん。
体格的に劣りながらも彼女が世界で輝くことができる理由はどこにあるのでしょうか?
20代で渡英した吉田さんはいつも、「どうして、私だけこんなにサエないんだろう。」と思っていたのだそうです。
なぜなら向こうのトップダンサーの脚ならどこから見てもまっすぐ。
しかし吉田さんの脚は、どこから見ても曲がっている。。
それでもできることをやるしかないと鏡の自分に言い聞かせて稽古に打ち込んだそうです。
49歳となられた今でも自分に自信はなく、まだまだがけっぷちを必死で走り続けているだけ、と語る練習の虫。
英ロイヤルバレエ団は表現に自立と個性を求め、「ミヤコの表現したいものは何なの?」と繰り返し問われたそうです。
そこで吉田さんは自分はどんな人間なんだろう、私だけの表現って何?と悩みながら練習に明け暮れました。
それでもいつも「こんな私でごめんなさい、とずっと心のどこかで思いながら、舞台に出ていました」と語ります。
しかし、練達の極みにいながら「こんな私で」の謙遜を秘めて踊る吉田さんのスタイルは、「私を見て」という自己主張の強い西欧のダンサーたちの中に入るとかえって目立ち、観客たちの視線を吸い寄せていったそうです。
そうして、「バレエは舞台の上だけで成立するものじゃない、お客様の『気』をいただいて、一緒に作っていくもの」という彼女ならではのスタイルが出来上がりました。
日本人であることの限界を自分で引き受け、芸術的な味わいに変えただけでなく、スターバレリーナには不可欠な個性に高めていった彼女の姿勢を私達も学びたいものですね。