「ビジョンは不正を防げない?!」
東芝の組織的不正、利益水増しが発覚。上層部が各事業部門に対し売上高や利益などの目標で「チャレンジ」を課し、強いプレッシャーをかけたということが指摘されています。
個人的な立場で考えればおかしいのでは、と疑いに持つことでも、いったん組織の人間の立場になるとそこに疑問を持たずに信じてしまうことは往々にして起こり得ます。(グループシンク/集団浅慮)
さらに権力や影響力のあるリーダーがいる組織であればあるほど、メンバーの意図しない不正を生み出す傾向が高いといわれています。
またそれはたとえリーダー自身は正義感が強く、リーダーが掲げたビジョンが、人のため、世のためとなり得るものであったとしても起こり得るのです。
例えば、米サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題に端を発した住宅バブルの崩壊について、「ビル・クリントン元大統領も非難されるべき」という説があります。
クリントン元大統領が『誰もがマイホームを持てるような世の中にしたい』というビジョンを示したことが、本来住宅を買ってはいけなかった人に家を買わせる仕組みを生み出し、粗悪な不動産担保証券に格付け会社が高い評価を与え、何千人もの路頭に迷う人たちを生み出した、というのです。
この説が批判しているのは、クリントン元大統領自身や彼の「誰もがマイホームを持てる世の中にしたい」というビジョンではありません。
ここで問われているのは、いかなる素晴らしいビジョンであっても、成果を急いだり結果ばかりに着目するのではなく、自分のビジョンを達成するために、どんなひずみが起きる危険性があるかをリーダーたるものは常に意識しなくてはならないのではないか、という点です。
つまりリーダーは、本当にそのビジョンでいいのか、何か見落としているところはないか、ビジョンばかりが先行し、大切なことが置き去りにされていないか、ビジョン達成を急ぐあまり不自然な利益供与が行われていないかといったポイントについて何度も何度も立ち止まってチェックすることが必要、ということ。
組織が人で構成される限り、意図しない不正が起こる危険性をどんな集団もはらんでいることを再確認したいものです。