ロールモデルの失敗
日本最大の新卒向け就職活動サイト「リクナビ」において、就活生に大量の企業にエントリーするよう勧める機能が露骨で、「エントリーあおり」だと批判を集めています。
リクナビ2015では、数十~100社もの企業に一括エントリーできる「まとめてエントリー」ボタンを随所に配置。
「内定獲得した先輩はもっとエントリーしています」とグラフを見せ、さらにエントリーを増やすよう促すなど、過剰なまでにエントリーを推奨しています。
これに対しリクルートキャリアは、できるだけ広く企業研究をしてほしいという思いからこれらの機能をつけた、と説明しています。
ただ、リクナビ上でまったく活動していない段階から「あなたの行動・志向にあわせておすすめ100社をピックアップ」と表示されるなど、メッセージと実際の機能にズレがあったり、エントリー数をあおるグラフなどは、表現が行きすぎだったことは否めないと言われています。
確かに、リクナビなど就活サイトの導入を決める企業担当者の採用担当者は、エントリー数で判断して褒められる、出世するという構造自体に問題はあるのかもしれません。
しかしこのような批判の中、リクナビは2015年版で初めて、ライバルのマイナビに掲載企業数で抜かれ、“就活サイトナンバーワン”の座も揺らぎつつあります。
”私たちは、一人一人の「自分の軸となる価値観」と「かけがえのない持ち味」を何より尊重し、共に探し続けます”
リクルートキャリアの掲げるミッションの一つであるこのステートメント。
企業は利益を追求する集団である以上、儲かるかどうか、という判断軸が強くなるのは当然です。
でも、儲かれば何をしても良いかといえばもちろんそうではなく、バランスを欠くとこうして批判を集め、支持を失う。
皮肉にも、もともとビジョナリーなイメージの強いリクルートが、自らの失敗によって、ミッションの意義を示してくれているのですね。