2014.06.16 イケテル仕事観
正直、僕は怖いです
フィギュアスケートコーチ 佐藤信夫さん
昨年のソチ五輪で浅田真央選手が会心の演技を果たしたとき、その横にあった佐藤コーチの姿は今でも印象深く記憶に残ります。
しかし多くの有名選手を育て上げてきた佐藤コーチでも、正直なところ浅田選手を担当することには迷いがあったのだそうです。
佐藤コーチは選手時代、日本選手権で10連覇という前人未到の記録を持つほど、ストイックにスケートを追求してきた人。
そんな佐藤コーチが何よりも大切にするのが基礎であり、ジャンプなどの大技の前に、まずはスケーティングの基礎をとことん叩き込む。
それが佐藤コーチのスタイルです。
しかし、浅田選手はジャンプを得意とし、何度も世界の頂点に立ってきた選手。
培ってきた技術は当然体に染み込んでおり、それを一から立て直すということは、一流の選手を壊してしまう可能性もある、ということを意味しました。
そんなリスクを覚悟して、佐藤コーチの指導はスタートしたのです。
そうして、我慢と今期の日々の末に迎えたソチ五輪。
誰もが目を疑うような結果に終わったショートプログラムの翌日、佐藤コーチが浅田選手にかけた言葉があります。
「真央が倒れたら、止められてでも僕が必ず助けに行くから」
それは選手の人生まで背負う覚悟を決め、どんな瞬間にも寄り添うことを表す言葉でした。
挑戦には失敗のリスクがあり、誰でも失敗は怖いもの。
でも、恐怖心にすら打ち勝つほどの強い覚悟で挑戦するからこそ得られる成果があることを、佐藤コーチは示してくれているような気がします。