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2020.07.17 エンタメ組織論

Nizi Projectから学ぶ J.Y.Park流フィードバック7つのセオリー

とにかく最近Nizi Projectに夢中でした。オーディションに参加した彼女たちももちろん素晴らしいけど、J.Y.Parkさんの在り方に心打たれた人も多いと思います。そのフィードバックの素晴らしさ。組織コンサルタントの私としては見逃すわけにはいきません。

もう一度見返してみて、しっかりと言語化したので記事化してみました。

 

アイドル発掘番組というだけじゃない


Nizi Projectはただのアイドル発掘番組ではなく、部下を育てるヒント、物事の言い方のヒントがすごく詰まった番組でもあります。今回は特に候補生のパフォーマンス後のフィードバックに注目し、そのポイントを7つに絞って話そうと思います。

マネジメントをやっている人間なら、なぜ彼女たちは1年という選抜期間の中であれほどまでに変貌を遂げたのか、学ぶところはたくさんあります。

J.Y.Park流フィードバック7つのセオリー:1. 一貫性


フィードバックの中身に行く前に、指摘する際の基準が明確であるということはとても大事です。

この番組を通して強く感じるのは、彼の中に明確な基準・こだわりがあるということ。候補者たちがデビューするために揃えなければいけない条件、このプロジェクトを通しての審査基準が明確であることは、フィードバックをする側にとってもされる側にとっても大切なことです。JYPでは歌、ダンス、スター性、人柄というわかりやすい明確な4つの判断軸が用意されていましたが、これが用意されており、その判断軸において基準に達しているかどうかというのをお互いが握れると意思疎通がしやすい。

もし明確な基準がなく、ただ評価されるだけだと受け手側にはすごく不満というかストレスがたまりますよね。
どこに向かって努力すればいいかわからず、最終的には評価者側の好みなのでは?という疑心暗鬼にもなってしまう。
だからこそ分かりやすい明確な基準がある、それが開示されているということは大事です。

この判断軸がブレないということも重要です。今回は番組を通してずっと判断軸が同じだったため、その基準に向かって努力をしやすいというのはありますよね。

また一人の候補者に向けてではなく、「僕が皆さんに求めていることは〜」や「こういう場合、こうなりやすいので気をつけましょう」といったラインの提示を織り交ぜているのも彼のポイントです。

 

J.Y.Park流フィードバック7つのセオリー:2. 態度


候補生に対してフィードバックをするときの表情に着目してみてください。彼はいわゆる強面と言われる顔だと思いますが、フィードバックする際には常に笑顔なんです。

また、厳しいフィードバックをするときも声のトーンと笑顔が平穏。

評価者側が笑顔であることや穏やかであることで、フィードバックを受ける側は落ち着いて内容を吟味しながら受け取ることができますし、笑顔であることで「期待されている」と思えます。これがずっと真顔で注意されたと想像してみてください。頑張る気持ちが生まれにくいですよね。フィードバックする際にはその言葉選び、伝え方だけでなく表出(表情)も大事だということです。

[分かりやすい例]
・パート1 第9話 SHOWCASEの際のリオへのフィードバック「曲が進むにつれてどんどん自信がなくなって、リオさんがどこかに行ってしまいました!」
・パート2 第2話 ミッション1(個人レベルテスト)のアヤカへのフィードバック「でもその成長は僕がアヤカさんの実力を分かっているので、ほかの練習生より期待値がかなり低いです。なのでこれからは本当にもっと頑張らなければいけません」

 

J.Y.Park流フィードバック7つのセオリー:3. 順序


フィードバックする際には順序がとても大切になります。
よくYes→Bad→Forという流れでやるといいという話がありますが、彼も基本的にはそのやり方でやっています。

よかった部分について褒める→改善して欲しい部分を伝える→改善するための具体的な施策、という流れで話されると、フィードバックを受けている側としてもさらに自分の成長を加速させる道筋が見えるので受け入れやすいし、次の行動が取りやすい。これを繰り返すことで、フィードバックをする側と受ける側に信頼関係が生まれていきます。

[分かりやすい例]
・パート1 第6話 ボーカルレベルテストのリマへのフィードバック
褒め:「本当によくできました!声が本当に発声も良くて音楽に埋まらず完全に突き抜けて聞こえました」
→改善点:「一つだけ必ず直さなければいけないです。ラップや歌を歌うとき、既存の歌手の演技のマネをしてしまいます!まだ幼いから」
→具体的な施策:「既存の外国のラッパーたちのジェスチャーや表情をそのままマネしないでほしいです」「僕はリマさんの表情と話し方で(歌もラップも)聞きたいです」
・パート2 第2話 ミッション1(個人レベルテスト)のニナへのフィードバック
褒め:「14歳なのにここまでのレベルというのは本当にあり得ないことだと思います」
→改善点:「歌唱力を見せようとするあまり、歌うときに大事なポイントをたくさん逃していたし、リズム感も全然良くなかったです」
→具体的な施策:歌い方の見本を見せる、「その曲の味を、曲の雰囲気、特徴を最大限活かすことを考えて歌うことがこれからの成長ポイントだと思います」

 

J.Y.Park流フィードバック7つのセオリー:4. 主観


彼は決めつけをしない。あくまでこう思った、こう受け取ったと主観的に伝える。それがフィードバックとして素晴らしい。

例えば練習不足だった人に対してみなさんならどう伝えますか?
日々のマネジメントでやりがちなのは「練習していなかっただろ。なっていないぞ」と決めつけて声をかけてしまうこと。そうではなくて、「練習していないように感じます」と伝えるのが、彼の上手い部分です。

みなさんがフィードバックを受ける側だったとして、どちらの言い方が受け取りやすく、次に生かせそうですか?
後者の方が納得感が強いですよね。頭ごなしに決めつけられるのではなく、実際やっているかどうかはわからないけれども、見ている側としてはこう感じる、私はこう思ったという伝え方ですね。

[分かりやすい例]
・パート1 第4話 ダンスレベルテストの際、リオへのフィードバック「”私は踊っているから見る見ないはどうぞご自由に”という印象を受けました」
・同じくアカリの病気のことを知らない状態でのパフォーマンスへのフィードバック「(このパフォーマンスだけを見て)感じることはアカリさんは才能は優れているけど努力しない人なのかな?と思います」

 

J.Y.Park流フィードバック7つのセオリー:5. 絶賛


また、褒める時にとことん褒めるのも彼の特徴です。彼が持っている基準を超えたらいい評価、しかもとてつもなくいい評価をされるということがわかります。

[分かりやすい例]
・パート2 第1話 ミッション1(個人レベルテスト)の際のミイヒへのフィードバック「練習生として評価するべきか、歌手として評価をするべきか分からないぐらい全く練習生には見えませんでした」「他の事務所の練習生だったら心の底から悔しかったと思います」
・同じくマコへのフィードバック「現在活動している他の女性歌手の中でこの振付をこんなにも力強く踊りながら、(歌も)ここまで安定して歌える方が何人いるか!多くないと思います…」

その一方で意識が甘く感じる候補者や成長速度が遅い候補者に関してはかなり厳しめの表現をします。

これは1つ目に取り上げた明確な判断基準があるという話にも紐付きますが、実際のフィードバックでここはいい、ここは違うということをかなりはっきり伝えているので、候補者は何がダメで何が求められているのかすごく分かりやすいですよね。

 

J.Y.Park流フィードバック7つのセオリー:6. 質問


番組全体を通して、候補者に対して質問している場面があります。しかも褒める流れなのか、指摘する流れなのかわからない絶妙な質問の仕方。

[分かりやすい例]
・パート1 第10話 SHOWCASEのパフォーマンス後のリクへの質問「この間指摘したことを覚えていますか?」
・パート2 第2話 ミッション1(個人レベルテスト)の際に、マヤにした質問「(僕が)マヤさんによく言っていたことがありますよね?」

本人の認識を確認してからフィードバックに入るというのは、効果的なフィードバックをする上で大切な観点でもあります。本人の認識が甘いのか、認識はしているものの技術が追いついていないのか、まぐれではなく認識した上で努力し改善されたものなのか、本人の考えを聞かなければ見えてこない部分です。

彼はこの質問の使い方が非常に効果的です。

 

J.Y.Park流フィードバック7つのセオリー:7. 人生観


彼はアイドルになるための技術だけをみているのではなく、アイドルたる人物かどうかというところも見ている。この番組を見た人にも「技術はできているけどあなたが見えない」「あなたの素をもっと見たい知りたい」というような表現が多く使われていたと感じた人がいると思います。

技術面の指導ももちろんだが、彼は要所要所で人生観、人間とはというところにリーチしていました。
ただ可愛いだけのアイドル、ただ売れるというだけのアイドルというフィクションではなく、彼が目指していたのはナチュラルなアイドル(実像)でした。
この素の状態、自分らしさを見せることへの彼のこだわりは、特に長い練習生期間の弊害として自分自身の素を出せず、スランプが長かったユナへのフィードバックに表れていたように思います。これは、パート1 第4話 ダンスレベルテストを終えた後の「僕はユナさんが普段どんな表情をしているのか見えない」「全てが練習したように見えるのが本当に惜しい」という発言や、パート2 第2話 ミッション1(個人レベルテスト)を終えた後の「Nizi Projectが終わる前にユナさんが持っている特別な才能を全て見せてくれる素敵なステージを期待しています」という発言に現れています。

またパート1 第6話のリマへのフィードバックも分かりやすい例だと思います。普段の性格を聞き、その受け答えをする彼女のすの表情を見て、「それがそのままパフォーマンスのときに出てきてほしい」「リマさんの表情や話し方で聞きたい」「典型的な表現はしないでください」と彼の希望を伝えている場面、ここは彼が作られた人ではなく、素(その人らしさ)をすごく大切にしていることがわかる部分です。

そして、彼の「その人の素を知りたい」という候補者自身について掘り下げる質問がされていることからも伺えます。パート1 第3話、マコが「自分のコンセプトが掴めてないことが悩み」と打ち明けると、その時彼は言いました「コンセプトは必要ない。貴方はそのままで特別なんだよ」。パート1 第7話ではマヤに対して「自分のありのままの姿が特別だということを分かるときが来るはずです」とも伝えています。またパート2 第3話では、リマにアイドルであろうとしすぎる彼女に対してその殻を破って自分の素を表現できたことをとても褒めていました。このやりとりはリマがその後とても溌剌としていくターニングポイントとなりました。

また、彼は折に触れて「こういう人であれ」「人生は自分次第」というメッセージを候補者に伝えていますよね。
テクニカル面でのフィードバックだけでなく、内面(人生)についてのフィードバックもあったのが、候補者の成長を加速させた要因の一つでもあると思っています。

最も分かりやすいところで言えば、パート2 第7話で「真実」「誠実」「謙虚」であれ、と練習生に訴えるところ。この3つはJYPの価値観で、これらについてこのように彼自身の言葉で以下のように伝えています。

真実
”隠すものが無い人になれ”という話です。
カメラの前でできない言葉や行動は、
カメラのない場所でも絶対にしないでください。
気を付けようと考えないで、
気をつける必要の無い立派な人になってください。
誠実
“自分との戦い”です。毎日するべきことをすることです。
自分自身に鞭を打って、
歌の練習、ダンスの練習、語学の勉強などを
ずっと続けていたら、
それが積み重なって君たちの夢を叶えてくれます。
謙虚
言葉や行動の謙虚ではなく、心の謙虚です。
自分自身が、本当に(常に)足りないと思って、
隣にいるみんなの短所を見ないで、
長所だけを見て心から感謝すること、
それが謙虚です。

以上がJ.Y.Parkから学ぶフィードバックの7つのポイントになります。
1. 一貫性
2. 態度
3. 順序
4. 主観
5. 絶賛
6. 質問
7. 人生観
もし気になるという方はぜひNizi Projectを実際に自分の目で見て学んでいただけるといいと思います(笑)
この7つぜひ皆さんの普段のマネジメントでも意識していただければと思います。ちなみにこの7つのラベリングには椎名林檎さん的な世界観にも拘りました。

また、このようにおおよそ仕事でない娯楽といえるコンテンツからも学び、自分の普段の仕事に生かせないかを考える発想力(アナロジー思考)はこれからすごく求めらてくると思います。当社でも自分が読んだ本、見た映画や番組から得た何気ない学びをシェアし、相互刺激ができるような時間があります。実はこの記事もそこで「Nizi ProjectのJ.Y.Parkさんのフィードバック技術がすごい」と話題に出したことから、記事化することが決まったんです(笑)
そういったような、学びの転化・応用をしようという発想やそれを実現するための行動への落とし込みができる力を鍛えていくと、みなさんの成長速度が上がっていくと思います。

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